発達障害の考え方

このHPに関してですが、発達障害という言葉で言い方を統一しています。

広汎性発達障害(PDD)とは

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広汎性発達障害とは、アスペルガー症候群や自閉症などを含む発達障害の分類です。具体的な症状や行動の特徴はどんなものがあるのでしょうか?ICD-10における広汎性発達障害の症状や特徴、診断方法や診断基準などを紹介します。DSM-5での新たな分類「自閉症スペクトラム」との関係・違いについても説明します。

広汎性発達障害(PDD)とは?

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。

発達障害情報・支援センターでの定義は以下の通りです。

広汎性発達障害(PDD:pervasive developmental disorders)とは、自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害をふくむ総称です。

発達障害は大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。

下の図を参考にしてみてください。

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発達障害の種類と概念図
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広汎性発達障害と自閉症スペクトラム障害の違いは何?

「広汎性発達障害(PDD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)の違いは何?」という質問がよくあります。実際、この二つの障害の定義の区別は難しいと言えます。

2013年にアメリカ精神学会により発刊された、国際的な診断基準のガイドラインである『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)では、この広汎性発達障害に分類される障害のほとんどが「自閉症スペクトラム障害」(Autistic Spectrum Disorder:略称ASD)という新たな総称に統合されました。「自閉症スペクトラム障害」には、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害が含まれています(レット障害は除外)。

そのため、「広汎性発達障害」と「自閉症スペクトラム障害」はレット障害の項目を除いて、ほぼ同じ内容を指していると考えることができます。

現場で見てみると、広汎性発達障がい(PDD)を考える時には広汎性発達障害の有無、すなわり0か100かで考える傾向があります。
一方で、自閉症スペクトラム(ASD)の「スペクトラム」とは連続体を意味し、この自閉症の傾向は誰にでもあり、その濃度の濃い薄いで0~100までを考える考え方であると言うことが出来ます。
そのため、
・広汎性発達障害の有無が問題であるとき→広汎性発達障害
・誰にでも広汎性発達障害の傾向があるという考え方→自閉症スペクトラム
と呼ぶことが多いです。

広汎性発達障害の3つの症状

それでは、広汎性発達障害の症状を説明して行きます。

広汎性発達障害の主な症状として
・社会性・対人関係の障害
・コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
・行動と興味の偏り

があります。

その他、広汎性発達障害のかなりの割合の人には「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対して特定の刺激に苦痛や不快感を感じる「感覚過敏」という症状が見られるという報告もあります。感覚過敏を持っている人が必ず広汎性発達障害だというわけではないですが、傾向として多いと言われています。

広汎性発達障害の中でも特に自閉症やアスペルガー症候群がよく知られていますが、自閉症の多くが知的障害を伴うのに対して、アスペルガー症候群は言葉の発達の遅れが伴わない「知的障害のない自閉症」と言われています。

また、知的障害のない自閉症は「高機能自閉症」とも呼ばれますが、アスペルガー症候群との定義の違いが曖昧で、専門家によって異なります。

広汎性発達障害の症状別の特徴

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広汎性発達障害の3つの症状の具体的な特徴を説明します。

社会性・対人関係の障害

「社会性・対人関係の障害」は4つの特徴に分かれます。

■孤立型
・人に関心がなく、関わるのを避ける
・呼んでも反応しない
・視線を合わせようとしない

■受動型
・言われたことに何でも従う
・嫌なことも受け入れてパニックを起こして固まってしまう
・固まってしまう

■積極・奇異型
・一方的に話し続ける
・同じことを何度も言う

■尊大型
・人を見下したような言い方をする
・横柄な態度を取る

他にも社会で適切に対応できる「適応型」などの特徴もありますが、広く知られているのは上記4つのタイプです。

コミュニケーションや言葉の発達の遅れ

「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」には、以下のような特徴が例として挙げられます。

・言葉の発達が遅い(オウムがえしが多い、単語しか発しないなど)
・会話が苦手(一方的に話す、受け答えができないなど)
・言葉を意味通りに理解してしまう(冗談や皮肉が通じない、たとえ話などを誤解してしまう)
・抽象的な言葉の意味や文脈の理解が困難(遊びのルールが分からない、「みんな」に自分が含まれていると気づかないなど)

言語能力に遅れがある場合、図式や絵で説明するなど、具体的に説明しないと文章の意味が伝わらないことがあります。また、自分が使っている言葉でも意味を理解していないことがあり、相手を傷つける発言をしてしまうことがあります。

行動と興味の偏り

広汎性発達障害の人は、ある特定のモノに強い興味やこだわりを見せることがあります。

具体的な特徴としては、
・予定の変更や初めての場所などに苦痛を感じる
・食事へのこだわりが激しいなどの偏食
・パターン化していない自由時間などが苦手
・普段はできていることが場所が変わるとできない

などが挙げられます。

広汎性発達障害の人は自分なりのこだわりがあるため、やり方に少しでも変化があると対応できなかったり、パニックを起こして泣き喚いたりする場合があります。

年齢別に見た広汎性発達障害の特徴の現れ方

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広汎性発達障害の症状は、成長過程と環境の変化によって変化して行きます。ここでは年代別に現れやすい広汎性発達障害の症状を紹介します。

幼児期(0歳~小学校就学)

広汎性発達障害は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳幼児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合がほとんどです。ですから、生後すぐに広汎性発達障害の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。

■周囲にあまり興味を持たない傾向がある
視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。障害がない子が興味をあるものを指でさして示すのに対し、広汎性発達障害の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。

■コミュニケーションを取るのが苦手
知的障害を伴う広汎性発達障害の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。障害がない子が友達とごっこ遊びを好むのに対し、広汎性発達障害の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。

■強いこだわりを持つ
興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においても様々なこだわりを持つことが多いので、ものごとの手順が変わると混乱してしまうことが多いです。

児童期(小学校就学~卒業)

児童期には、主に小学校での集団生活や学習において、以下のような特徴が現れやすくなります。

■集団になじむのが難しい
年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。

■臨機応変に対応するのが苦手
きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。

■「どのように」「なぜ」といった説明が苦手
言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため、説明ができないこともあります。

思春期(小学校卒業~)

中学生以降の思春期では、以下の様な特徴が現れやすくなります。

■不自然な喋り方をする
抑揚がない、不自然な話し方をする子が多いです。これはアスペルガー症候群の子に多いと言われる特徴です。

■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手
上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。

■雑談が苦手
目的の無い会話をするのを難しく感じる子が多いです。

■興味のあるものにはとことん没頭する
広汎性発達障害の子は上でも述べたように物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。

広汎性発達障害の診断基準

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広汎性発達障害の症状・特徴チェック

広汎性発達障害について、気になる症状がある場合は医師に相談し、診断を受けることもできます。医療機関での診断は、アメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準によって下されます。

医療機関では、診断基準に基づいたテスト、生育歴の聞き取り、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと話を聞いた上で総合的に判断されます。原因や治療は「自閉症」と共通するパターンが多いです。個々のニーズにあった療育や支援、投薬が必要となってきます。

DSM-5では、ICD-10で広汎性発達障害の診断名の下にあったレット障害をのぞくすべての障害名が、自閉症スペクトラム障害という名に統合されました。そのため、今後は広汎性発達障害の診断は少なくなると思われます。本記事ではDSM-5における自閉症スペクトラム障害を診断する基準をご紹介します。

A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。

B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)
(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。
(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)
(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)

C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。

D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。

E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

広汎性発達障害の疑いを感じたらどうすればいい?

広汎性発達障害の診断は専門機関・医療機関での総合的な検査が必要です。自己判断はさけ、上記の基準の中に当てはまる項目や気になることが多い場合は、専門機関での相談・検査をおすすめします。

特に見た目から判断しづらい広汎性発達障害の場合、大人になるまで気づかないケースも多々あります。障害と知らずに様々な困難に直面することで自信をなくしたり、周りからいじめにあうなど辛い思いをする人も多くいます。早めに障害を発見し対応することで、その後の人生の困難が少なくなります。

また、早めに障害を理解して対応することは、うつ病や精神障害などの二次障害の予防にもなります。少しでも広汎性発達障害の症状や特徴が見られたら、早めに対処することが大切です。

診断を受ける前にまずは専門機関で相談を

医療機関での診断は、子どもの場合は、発達障害の専門外来がある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。しかし、広汎性発達障害を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。いきなり専門医に行くのは難しいので、障害なのかな、と疑問を持った場合、まずは地域にある身近な専門機関で相談するようにしましょう。

子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など

知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。

以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。各地域の「発達障害者支援センター」に相談をして、障害の疑いがあれば、そこから専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。

まとめ

広汎性発達障害には様々な症状がありますが、その症状には個人差があります。

早期にそれらの特性に気づき、一人一人に合った環境をつくること、早期療育や適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。広汎性発達障害のある人の中でも、特性を活かして活躍している人がいます。特性を活かせるような環境づくりをすることで、本人の生活上の困難さを解消し、その人らしく生きることが可能になるでしょう。

こういったことを踏まえながら、発達障害と一言で言っても、色々な捉え方や考え方があり、その方のどういう症状を指しているのかを考えていくことが、発達障害を理解する上ではとても大事なことであると考えています。